Nikola's Wisdom ニコラの知恵:イノベーションに関わる国際コンサルタントのブログ

国際間のイノベーション創出をサポートするコンサルタントが、日々の活動を通して見聞きしたこと、学んだこと、気づいたこと、などなどざっくばらんに綴っていきます。

カザフスタンでイノベーションについて語ってきました!

11月末にカザフスタンを初めて訪問しました。本格的な冬はまだこれからというこの時期ながら、外気温はマイナス29℃。街全体が凍りついたかのような極寒の首都アスタナで開催されたカザフスタン政府主催の国際会議「Innovation Congress」に出席。日本人唯一の参加者として、パネルセッションにおいて日本のイノベーション創出の現状と国際的な技術移転の経験などを話す機会が与えられました。

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ところで、日本人にとってはあまり馴染みのないカザフスタン共和国中央アジアとヨーロッパにまたがるユーラシア大陸の中心に位置していて、西はカスピ海に接し、北はロシア、東は中国という超大国に囲まれた国です。旧ソ連から独立した独立国家共同体(CIS)の一つで、国土は日本の約7倍の広さ、内陸国としては世界最大だそうです。そして、その広大な国土のほとんどが砂漠と平原で、石油や天然ガスウランなどの天然資源に恵まれた資源大国です。特にウランは世界の産出量の40%を占めるそうです。

 

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さて、この中央アジアカザフスタンで何故イノベーションなのか、、、。GDPの約80%を鉱物資源及びその関連製品の輸出が占めるカザフスタンですが、実は国をあげて天然資源依存から脱却して、高度技術を保有して自らイノベーションを生み出す国家へと産業構造の転換を図ることを目指しています。今回出席した会議も、イノベーション創出と新産業の育成を促進することを目的とした2020年までの10年計画の国家プロジェクトの一環として開催されている年次会議です。まだ国内に確固とした技術開発基盤を持たないカザフスタンは、国家戦略としてイノベーションを求めて積極的に外国企業との連携を求めています。パネラーとして参加したセッションには、アメリカ、ドイツ、ロシア、イスラエル、マレーシア、韓国などのイノベーションに関わる専門家や企業家が参加し、カザフスタンとのイノベーション連携の可能性について活発なディスカッションが持たれました。

その中でも、日本は重要な連携先のひとつ。この会議に先立つ11月上旬には、ナザルバエフ大統領が来日し、安倍首相との会談と共に複数の技術型ベンチャー企業や独自技術を持つ中小企業を訪問しています。私たちジャパン・テクノロジー・グループ(JTG)は日本の技術移転会社として、大統領来日に併せて東京で開催された「第6回日本カザフスタン経済官民合同協議会」において、カザフスタン国家発展エージェンシー(NATD)と日本カザフスタン両国間でのイノベーション創出と新産業育成を目的とした連携に関するMOU(Memorandum of Understanding:覚書)を締結しました。

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今後は、このMOUに基づき、NATDが提供する国際的な技術移転活動に関わるプロジェクトを支援する助成金を活用するスキームを確立し、両国間での技術移転の実現を目指します。今回Innovation Congressに先立って行ったNATDでの実務者会議では、来年度の活動計画を話し合いました。具体的には、日本の革新的な技術を求めるカザフスタン企業の技術ニーズをNATDが調査し、そのニーズに基づき我々JTGが日本から技術を探索し、技術移転を目指すというプロジェクトを立上げることで合意しました。また、NATDのビジョンは、単にカザフスタン国内だけでなく、将来的には彼らを窓口として、タジキスタンキルギスなど中央アジア周辺国、及びロシア経済圏での新産業育成にまでこの活動を拡大し、周辺地域の経済成長に貢献することだと、会議の席上でイズテレオフ所長が明言していました。

来年2017年には、国際博覧会「アスタナ万博2017」が開催される首都アスタナ。帰りがけに空港に向かう途中、市内の中心部にほど近い万博会場となるエリアでパビリオンや宿泊施設などの大規模な建設が急ピッチで行われている様子を見ながら、この万博開催を機に世界の国々との連携をさらに深めて自国でのイノベーション創出に積極的に取組むという政府首脳の演説を思い返していました。

たった3日間の短い滞在でしたが、国家の将来を見据えたビジョンと戦略を持って、ダイナミックに変わろうとするカザフスタンの人々のやる気とその本気の姿勢を垣間見ることができました。そして、来年以降のNATDとの具体的なプロジェクト立ち上げに向けた取り組みの成功を期待しつつ、極寒の地を離れました。